三浦ノート

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水素原子の基底状態のエネルギーと半径の長さの古典的概算

問題

水素原子が半径 $r_0$ の球と考える.電子の位置の不確定さが $r_0$ 程度で,$r_0$ と運動量の不確かさ $p_0$ の積 $r_0 p_0$ が最小になる基底状態を考えると、不確定性原理より運動量の不確定さは $\hbar / r_0$ 程度ということになる.電子の持つエネルギー(運動エネルギーとクーロン力による静電エネルギー) \begin{equation} E = \frac{p^2}{2m_e} - \frac{e^2}{4\pi \epsilon _0 r} \end{equation} を計算するのに,$r = r_0$ ,$p = \hbar / r_0$ として大雑把な値を見積もることにする.基底状態(最もエネルギーの低い状態)のエネルギーと,そのときの半径を求めよ.

解答

式(1) に $r = r_0$ ,$p = \hbar / r_0$ を代入すると, \[E = \frac{\hbar^2}{2m_e {r_0}^2} - \frac{e^2}{4\pi \epsilon _0 r_0} \] となる.この式は$1 / r_0$ に関して下に凸の二次関数である.その最小値(グラフの頂点)を求めるために $1 / r_0$ について平方完成すると \[E = \frac{\hbar^2}{2m_e} \left(\frac{1}{r_0}-\frac{e^2 m_e}{4\pi \epsilon_0 \hbar^2} \right)^2 - \frac{e^4 m_e}{32\pi^2 {\epsilon_0}^2 \hbar^2}\] となる. ▶クリックで途中計算を開く

よって $E$ の最小値は $- \frac{e^4 m_e}{32\pi^2 {\epsilon_0}^2 \hbar^2} \fallingdotseq -2.180 \times 10^{-18} \ [\mathrm{J}]$ である.

そのときの半径は $r_0 = \frac{4\pi \epsilon_0 \hbar^2}{e^2 m_e} \fallingdotseq 5.291 \times 10^{-11} \ [\mathrm{m}]$

この $r_0$ の値はボーア半径と呼ばれる.