理論電磁気学』著.砂川重信 1999年
の第8章§7 電磁波の散乱 を読んだ .
あるモノに電磁波が衝突すると何らかの影響(境界条件など)を与えられ電磁波の散乱現象が起きる.そんな電磁波の障害物のようなモノを散乱体という.電磁波によって散乱の影響が拡大され,目的の微小な対象の性質を調べることができる.
定常波を使った散乱問題を解いてみよう.やることは,波動方程式の初期値問題を解くことである.
定常波の波動関数を変数分離した位置に関する関数はHelmholtz方程式を満たす.この方程式の一般解をまず求めよう.
散乱体を中心とした対称な散乱を考えるとすると,球座標を用いるのが良いだろう.解をさらに変数分離すれば一般解は級数解としてLegendre展開の形で表される.その係数部分は変数分離した時に現れた動径関数である.その動径関数はBesselの微分方程式をみたし,球Bessel関数を用いて表される.これでHelmholtz方程式の一般解が得られた.
この一般解にある一方向に進む平面波を代入して比較して係数を求めれば,Reyleighの公式が得られる.これは,平面波をLegendre展開した式と見ればいいだろう.
あとは,この一般解の未定定数を散乱体による境界条件や,無限遠方での境界条件を用いて求めればよい.
また,この結果は実験によって検証されなければならないが,どんな物理量が散乱によって得られるのか.わかりやすいのはエネルギ―である.エネルギーを散乱現象で分かりやすい形に変えたのが散乱断面積である.散乱断面積を求めるためには散乱振幅が必要であり,そのパラメータである散乱角も,平面波や散乱振幅の展開計算によって,また新たなパラメータを用いて表されることになる.
その過程で,入射波と散乱波の十分遠方での位相のずれを用いて,散乱波の波動関数が表されることになる.
そして,球Bessel関数の漸近形をつかって係数比較で簡単に散乱波の波動関数の位相のずれを求めることができる.位相のずれを求めれば逆に全断面積が求められ散乱問題は解決である.
散乱体の大きさに対して電磁波の波長が十分大きいと散乱されにくくなる.全断面積は波長の4乗に逆比例する.これはReyleigh散乱と呼ばれる.
例えば可視光は空気分子に対してReyleigh散乱を起こす.波長の短い青色の光はよく散乱され,地上の人間の目によく届くので空が青いのである.
Kirchhoffの積分表示を用いて積分方程式を解くことによっても散乱問題を解くことができる.波動関数をLegendre展開したり,特殊関数を用いたり,かなり数学的技巧の要求される計算であるが導かれる解は同じである.