三浦ノート

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角運動量演算子の固有値が取ることができる値の導出

角運動量演算子 $ \hat{\boldsymbol{L}}^2, \hat{L} _ z $ は可換でそれぞれエルミート演算子なので, ▶証明

固有状態 $ |l,m\rangle $ と $ \lambda_l , m \in \mathbb{R} $ を用いて

\begin{align} \hat{\boldsymbol { L }} ^ { 2 } | l , m \rangle &= \hbar ^ { 2 } \lambda_l | l , m \rangle \\ \hat{L} _ { z } | l , m \rangle &= \hbar m | l , m \rangle \end{align}

とおくことができる( $ \lambda_l $ と $ m $ は無関係とする).

前記事(角運動量演算子と昇降演算子 - 三浦と窮理とブログ) より,昇降演算子 $ \hat{L} _ \pm = \hat{L} _ x \pm i \hat{L} _ y$ は固有状態 $ | l , m \rangle $ を $ | l , m\pm1 \rangle $ に対応させる演算子であることが言える.(前記事では $ \lambda_l =l(l+1) $ と仮定してしまっていたが,この性質は $ \lambda_l ,m$ に依らず成り立つ.)

本記事では実際に $ \lambda_l =l(l+1)~,~ l=0,1/2,1,3/2,2,\cdots $ . $ m = -l, -l+1,\cdots,l-1,l $ であることを示そう.

証明

$ | \hat{ L} _ { \pm } | l , m \rangle | ^ { 2 } \geq 0 $ より, $ \lambda_l $ が初めに与えられたとき, $ m $ には $ \lambda_l $ に依存した上限と下限が存在する.

なぜなら,連続値としての $ m $ の動ける範囲が $ - \sqrt{\lambda_l} \le m \le \sqrt{\lambda_l} $ であり, ▶導出

$ m $ は昇降演算子によって1づつ増減するので, $ m $ を離散値として考えた時に上限 $ m _ {\mathrm{max}} $ s.t. $ m _ {\mathrm{max}} \le \sqrt{\lambda_l} \le m _ {\mathrm{max}} +1$ と 下限 $ m _ {\mathrm{min}} $ s.t. $ m _ {\mathrm{min}} -1 \le -\sqrt{\lambda_l} \le m _ {\mathrm{min}} $ が存在するためである(i.e. $ m _ {\mathrm{min}} \le m \le m _ {\mathrm{max}} $ ).

このことから, $ \hat{ L} _ + |l,m _ {\mathrm{max}} \rangle =0 , \hat{ L} _ - |l,m _ {\mathrm{min}} \rangle =0 $ でないといけない. ▶詳細

そして, $ m _ {\mathrm{max}}=-m _ {\mathrm{min}} $ である. ▶導出

$ m_{\mathrm{max}} = l $ と置くと,式\eqref{eq:ll}より $ \lambda_l = l (l+1) $ である.

また, $ -l \le m \le l $ であり, $ m $ は1づつ増減するので $ -l $ から $ l $ までの幅 $ 2l $ は自然数である.よって $ l $ に許される値は $ 0,1/2,1,3/2,2,\cdots $ である.

以上より, $ m =-l, -l+1,-l+2,\cdots,l-2,l-1,l $ である.

参考文献

現代の量子力学(上) 第2版 (物理学叢書)

現代の量子力学(上) 第2版 (物理学叢書)

  • 作者: J.J.サクライ,J.ナポリターノ,J.J. Sakurai,Jim Napolitano,桜井明夫
  • 出版社/メーカー: 吉岡書店
  • 発売日: 2014/04/10
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