3個の粒子系を考える. 各粒子の角運動量を表す演算子を $ \hat{J} _ 1 , \hat{J} _ 2,\hat{J} _ 3 $ と表し,粒子系全体の合成角運動量演算子を $ \hat{J} $ と表すとする.
ここで,各粒子が角運動量 $ \ell _ 1 = 4 , \ell _ 2 =3 , \ell _ 3 =2 $ をもつ場合を考える.
この粒子系の全角運動量 $ j $ のとりうる値は $ 0\le j \le 9 $ である.
そして,この全角運動量の全状態数は315である.
この全状態数は,3粒子を独立に扱って得られる全状態数 $ (2\ell _ 1+1)(2\ell _ 2+1)(2\ell _ 2+1) =9\cdot 7\cdot 5 = 315$ に等しい.
詳細
3つの角運動量演算子の合成をするために,まず $ \hat{J} _ 1 $ と $ \hat{J} _ 2 $ の合成角運動量演算子 $ \hat{J} _ {12} $ を考え,その次に $ \hat{J} _ {12} $ と $ \hat{J} _ 3 $ の合成角運動量演算子として $ \hat{J} $ を求める.
$ \hat{J} _ 1 $ と $ \hat{J} _ 2 $ の合成角運動量演算子 $ \hat{J} _ {12} $ の角運動量 $ j _ {12} $ がとりうる値は
である.よって,$ \hat{J} _ {12} $ と $ \hat{J} _ 3 $ の合成角運動量演算子 $ \hat{J} $ の角運動量 $ j $ がとりうる値は
である.
系は角運動量 $j$ に対し $2j+1$ 個の状態をとることができるので,この全角運動量の状態数は
となる.
合成する順番が違う場合でも全状態数は変わらない
$ \hat{J} _ 1 $ と $ \hat{J} _ 3 $ の合成角運動量演算子 $ \hat{J} _ {13} $ の角運動量 $ j _ {13} $ は $ 2 \le j _ {13} \le6 $ の値をとりうる.そして $ \hat{J} _ {13} $ と $ \hat{J} _ 2 $ の合成角運動量演算子 $ \hat{J} $ の角運動量 $ j $ は $ |j _ {13} - 3| \le j \le j _ {13} + 3 $ の値をとりうる. よって全状態数は
である.
同様に$ \hat{J} _ 2 $ と $ \hat{J} _ 3 $ の合成角運動量演算子 $ \hat{J} _ {23} $ と $ \hat{J} _ 1 $ を合成した角運動量演算子の全状態数も315である.