三浦ノート

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位相空間論の積空間・商空間についての例題

位相空間論の積空間や商空間についての例題を解きましたので解答を載せていきます.

定義などの細かいことは次の本を参考にしています.

集合と位相 (数学シリーズ)

集合と位相 (数学シリーズ)

  • 作者:内田 伏一
  • 出版社/メーカー: 裳華房
  • 発売日: 1986/11/01
  • メディア: 単行本

目次

ハウスドルフ空間の積空間はハウスドルフ空間である.

2つのハウスドルフ空間 $ X,Y $ に対して,その積空間 $ X\times Y $ もハウスドルフ空間である.


証明

任意の異なる2点 $ (x _ 1 , y _ 1) , (x _ 2,y _ 2) \in X\times Y $ に対して,次の2つの場合に分けてハウスドルフ性を確認していく.

(i) $ x _ 1 = x _ 2 , y _ 1 \ne y _ 2$

(ii) $ x _ 1 \ne x _ 2 , y _ 1 \ne y _ 2 \quad$


(i) $ x _ 1 = x _ 2 , y _ 1 \ne y _ 2$ の場合,

$ X $ における $ x _ 1 $ の任意の近傍 $ U $ をとる.

そして $ Y $ のハウスドルフ性より, $ Y $ 上の2つの開集合

\begin{equation} V _ 1 ,V _ 2 ~\mathrm{s.t.}~ y _ 1 \in V _ 1 , y _ 2 \in V _ 2 , V _ 1 \cap V _ 2 = \emptyset \end{equation}

が存在する.

$ U \times V _ 1 , U \times V _ 2 $ は $ X \times Y $ 上の開集合であり,

\begin{align} (x _ 1 , y _ 1) &\in U \times V _ 1 \\ (x _ 1,y _ 2) &\in U \times V _ 2 \\ (U \times V _ 1) &\cap (U \times V _ 2) = U \times (\underbrace{V _ 1 \cap V _ 2} _ {=\emptyset}) = \emptyset \end{align}

を満たす.

(ii) $ x _ 1 \ne x _ 2 , y _ 1 \ne y _ 2$ の場合,

$ X $ のハウスドルフ性より, $ X $ 上の2つの開集合

\begin{equation} U _ 1 ,U _ 2 ~\mathrm{s.t.}~ x _ 1 \in U _ 1 , x _ 2 \in U _ 2 , U _ 1 \cap U _ 2 = \emptyset \end{equation}

が存在する.

同様に $ Y $ のハウスドルフ性より, $ Y $ 上の2つの開集合

\begin{equation} V _ 1 ,V _ 2 ~\mathrm{s.t.}~ y _ 1 \in V _ 1 , y _ 2 \in V _ 2 , V _ 1 \cap V _ 2 = \emptyset \end{equation}

が存在する.

$ U _ 1 \times V _ 1 , U _ 2 \times V _ 2 $ は $ X \times Y $ 上の開集合であり,

\begin{align} (x _ 1 , y _ 1) &\in U _ 1 \times V _ 1 \\ (x _ 2,y _ 2) &\in U _ 2 \times V _ 2 \\ (U _ 1 \times V _ 1) &\cap (U _ 2 \times V _ 2) = \emptyset \end{align}

を満たす.

以上より,積空間 $ X\times Y $ がハウスドルフ空間であることが示された.

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▶TikZコード

積空間からの射影は連続写像である

積空間 $ X \times Y $ から位相空間 $ X $ への射影 $ \pi $ を $ \pi (x,y) := x ~(x \in X,y\in Y) $ で定めると,これは連続写像になる.


証明

$ X $ の開集合 $ U $ に対し, $ \pi ^ {-1} (U) = U\times Y $ である.

$ U\times Y $ は $ X \times Y $ の開集合であり,開集合の $ \pi $ による逆像が開集合になることが言える.

よって, $ \pi $ は連続写像である.

トーラス面と同相な2次元ユークリッド空間 $ \mathbb{R} ^ 2 $ の商空間

2次元ユークリッド空間 $ \mathbb{R} ^ 2 $ に関係 $ \sim $ を次のように与える:

$ (x _ 1,y _ 1),(x _ 2,y _ 2) \in \mathbb{R} ^ 2 $ に対して,

\begin{equation} (x _ 1,y _ 1) \sim (x _ 2,y _ 2) ~\Leftrightarrow ~ x _ 2 - x _ 1 \in \mathbb{Z} , y _ 2 - y _ 1 \in \mathbb{Z}. \end{equation}

(1) この関係 $ \sim $ は同値関係である.

(2) この同値関係による商空間 $ \mathbb{R} ^ 2 /\sim $ はトーラス面と同相である.


(1)の証明

・反射律

$ x _ 1 - x _ 1 = 0 \in \mathbb{Z} , y _ 1 - y _ 1 =0 \in \mathbb{Z} $ より $ (x _ 1,y _ 1)\sim(x _ 1,y _ 1) $ .

・対称律

$ (x _ 1,y _ 1)\sim(x _ 2,y _ 2) $ であるとする.よって $ x _ 2 - x _ 1 , y _ 2 - y _ 1 \in \mathbb{Z} $ .

よって

\begin{align} x _ 1 - x _ 2 &= -( x _ 2 - x _ 1) \in \mathbb{Z} \\ y _ 1 - y _ 2 &= -( y _ 2 - y _ 1) \in \mathbb{Z} \end{align}

なので, $ (x _ 2,y _ 2)\sim(x _ 1,y _ 1) $ である.

・推移律

$ (x _ 1,y _ 1)\sim(x _ 2,y _ 2) , (x _ 2,y _ 2)\sim(x _ 3,y _ 3) $ であるとする.よって

\begin{align} x _ 2 - x _ 1 , y _ 2 - y _ 1 , x _ 3 -x _ 2 , y _ 3 - y _ 2 \in \mathbb{Z} \end{align}

である.よって,

\begin{align} x _ 3 - x _ 1 &= (x _ 3 - x _ 2) + (x _ 2 - x _ 1) \in \mathbb{Z} \\ y _ 3 - y _ 1 &= (y _ 3 - y _ 2) + (y _ 2 - y _ 1) \in \mathbb{Z} \end{align}

なので, $ (x _ 1,y _ 1) \sim (x _ 3,y _ 3) $ である.

以上より,関係 $ \sim $ が同値関係であることが示された.

(2)の証明

商空間 $ \mathbb{R} ^ 2 /\sim $ は,

\begin{align} \mathbb{R} ^ 2 /\sim &= \{ [(a,b)] ~|~ a,b\in [0,1) \} \label{eq:45seki} \\ [(a,b)] &:= \{ (x,y) \in \mathbb{R} ^ 2 ~|~ (a,b) \sim (x,y) \} \\ &= \{ (x,y) \in \mathbb{R} ^ 2 ~|~ x-a =m , y-b = n ~\mathrm{for}~ m,n \in \mathbb{Z} \} \end{align}

と表すことができる.

$ a,b $ の定義域になっている半開区間 $ [0,1) $ は幅が1ならば何でもいい(e.g. $ [1,2) , [2.5,3.5) $ ).

$ [(0,0)] \in \mathbb{R} ^ 2 /\sim $ は $ (0,0) \in \mathbb{R} ^ 2$ と $ (1,0) \in \mathbb{R} ^ 2$ を含み,これらを同一視できる.よって $ \{[(a,0)] ~|~a\in [0,1) \} $ は円周 $ S ^ 1 $ と同相である. 同様の理由で $ \{[(0,b)] ~|~b\in [0,1) \} $ も円周 $ S ^ 1 $ と同相である.

よって\eqref{eq:45seki}より, $ \mathbb{R} ^ 2 /\sim $ はトーラス面 $ S ^ 1 \times S ^ 1 $ と同相である.