三浦と窮理とブログ

主に自然科学について自分が勉強してきたことについて書いていきます.誰かの役に立ってくれれば嬉しいです.

正準変換は群をなすことのシンプレクティック表示による証明

目次

無限小正準変換はリー代数をなす

相空間(q,p)上の物理量 f(q,p) は無限小正準変換によって f + δf = f + {f , εaFa} と変換される ( { ・,・} はポアソン括弧を表す. εa は変換のパラメータ, Fa はこの変換の生成子). ここではこの δ を無限小正準変換の演算子と見る. 二つの無限小正準変換 δ12 に対して

\begin{equation} [\delta_1,\delta_2] f = \{ f, \epsilon_{1a}\epsilon_{2b}\{F_{2b},F_{1a} \} \} \end{equation}

なので [δ12] も無限小正準変換であり,その生成子は {F2b,F1a} である. ▶クリックで途中計算を開く

ハミルトン方程式のシンプレクティック表示.正準変換の特徴付け.

相空間 (q(t) ,p(t) ) 上の位置ベクトルを $ \boldsymbol{x} := \left( \begin{smallmatrix} q \\ p \end{smallmatrix} \right) $ と表す. ベクトル表記ではハミルトン方程式は

\begin{equation} \dot{\boldsymbol{x}} = \Omega \frac{\partial H}{\partial \boldsymbol{x}} (\boldsymbol{x}) \label{ep:orihami} \end{equation}

と表せる. ▶クリックで途中計算を開く

一般座標変換 $ f : \boldsymbol{x} \mapsto \boldsymbol{X} = \left( \begin{smallmatrix} Q \\ P \end{smallmatrix} \right) $ を考えると, $ \boldsymbol{x} $ は変換後の座標を用いて $ \boldsymbol{x}(\boldsymbol{X}) =\left( \begin{smallmatrix} q(Q,P) \\ p(Q,P) \end{smallmatrix} \right) $ と表される. この座標変換のヤコビ行列を $ J_f(\boldsymbol{X}) $ と表す ▶クリックでヤコビ行列の性質を開く

元のハミルトン方程式\eqref{ep:orihami}は一般座標変換後の座標 (Q,P) を使って

\begin{equation} \dot{\boldsymbol{X}} = (J_f)^{-1}(\boldsymbol{X}) \Omega (J_f^\mathrm{T})^{-1} (\boldsymbol{X})\frac{\partial H}{\partial \boldsymbol{X}} (\boldsymbol{x}(\boldsymbol{X})) \end{equation}

と表される ▶クリックで途中計算を開く

この式から $ J_f(\boldsymbol{X}) \Omega J_f^\mathrm{T}(\boldsymbol{X}) = \Omega $ のとき,変換後の座標 (Q,P) についてもハミルトン方程式が成り立つことが言える. すなわち $ J_f \Omega J_f^\mathrm{T} = \Omega $ ならば座標変換 f は正準変換である.

ポアソン括弧は正準変換で不変である

相空間 (q,p) 上の位置ベクトルを $ \boldsymbol{x} $ と表す.二つの物理量 A(q,p),B(q,p) に対し,ポアソン括弧は

\begin{equation} \label{eq:pb} \{A ,B\}_{\boldsymbol{x}} = \left(\frac{\partial A}{\partial \boldsymbol{x}}(\boldsymbol{x}) \right)^\mathrm{T} \Omega \frac{\partial B}{\partial \boldsymbol{x}}(\boldsymbol{x}) \end{equation}

と表される. ▶クリックで途中計算を開く

正準座標変換 $ f:\boldsymbol{x} \mapsto \boldsymbol{X}= \left( \begin{smallmatrix}Q\\P\end{smallmatrix} \right) $ を行う.式\eqref{eq:pb}は変換後の座標 (Q,P) を用いて

\begin{equation} \{A ,B\}_{\boldsymbol{x}(\boldsymbol{X})} = \left(\frac{\partial A}{\partial \boldsymbol{X}} \right)^\mathrm{T} J_f^{-1}(\boldsymbol{X}) \Omega (J_f^\mathrm{T})^{-1}(\boldsymbol{X}) \frac{\partial B}{\partial \boldsymbol{X}} \end{equation}

と表される. ▶クリックで途中計算を開く

f は正準変換なので $ J_f^{-1}(\boldsymbol{X}) \Omega (J_f^\mathrm{T})^{-1}(\boldsymbol{X}) = \Omega $ である.よって

\begin{equation} \{A ,B\}_\boldsymbol{X} = \left(\frac{\partial A}{\partial \boldsymbol{X}} \right)^\mathrm{T} \Omega \frac{\partial B}{\partial \boldsymbol{X}} \end{equation}

である.

正準変換全体の集合は変換の合成を積として群をなす

座標変換の合成は結合則を満たす.

: 二つの正準変換 f,g とその合成変換 g◦f に対し $ J_{g\circ f} \Omega J_{g\circ f}^\mathrm{T} = \Omega $ なので g◦f も正準変換である.

単位元: 恒等変換 e は正準変換である.

逆元: 正準変換 f に対し det(Jf) = ± 1 ≠ 0 なので逆行列 Jf-1 が存在する. よって $ J_{f^{-1}}\Omega (J_{f^{-1}})^\mathrm{T} = \Omega $ なので逆変換 f-1 も正準変換である.

▶クリックで途中計算を開く

よって正準変換全体の集合は変換の合成を積として群をなすことが示された.

参考文献

Field Theory: Second Edition (Frontiers in Physics)

Field Theory: Second Edition (Frontiers in Physics)

ヤコビ行列 - Wikipedia

http://theory.tifr.res.in/~sgupta/courses/cm2011/lec8.pdf


本記事の内容をTeXで出力したPDF版を200円で販売しています.体裁は少し違いますが内容は同じものです.

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